サッカー界において「スモール・ジャイアント」の代名詞となったクロアチア代表の強さの理由とその真相を探る上で、避けて通れないのが同国の特殊な歴史的・社会的背景です。1991年の旧ユーゴスラビアからの独立宣言とそれに続く激しい独立戦争を経験したこの国では、国を背負って戦うナショナルチームへの帰属意識が他国とは根本的に異なります。
かつてモドリッチが自著『マイ・ゲーム』の中で「戦争の砲火と避難所生活の中でボールを蹴り続けた記憶が、恐怖に屈しない心を育てた」と述懐している通り、クロアチアの選手たちには共通して「イナト(Inat)」と呼ばれる反骨精神と不屈のプライドが宿っています。理不尽な逆境に立たされた時こそ団結し、限界を超えたエネルギーを発揮する心理的メカニズムが、延長戦やPK戦での驚異的な勝率へと直結しています。
精神論にとどまらず、育成システムの構造的完成度も見逃せません。名門ディナモ・ザグレブのアカデミーを筆頭に、国内主要クラブは限られた人口資源から原石を早期に発掘し、10代前半から徹底した戦術理解と技術指導を叩き込みます。国内リーグ(プルヴァHNL)を欧州5大リーグへのステップアップの場と位置づけ、若くして厳しい生存競争に晒すエコシステムが、途切れることのないタレント供給を可能にしています。