柳沢敦氏を語る上で避けて通れないのが、2006年ドイツW杯クロアチア戦での決定機逸と、それにまつわる「柳沢敦 QBK 真相」(急にボールが来たので)というフレーズです。
ゴール前で加地亮選手からの絶好のラストパスを右足アウトサイドで外してしまったプレーは、試合後のインタビューで語ったとされる「急にボールが来た」という要約フレーズとともに、ネット掲示板やSNSで長年にわたり一人歩きしました。
しかし、後年の特番インタビューや技術検証番組、自著等で明かされた実際の技術的真相は大きく異なります。柳沢氏本人の証言によると、当時のグラウンドコンディションや加地選手のクロスの軌道、インサイドで安全に合わせると相手GKにブロックされる角度であったことなど、コンマ数秒の間に高度な判断と選択が行われていました。決して漫然とプレーしていたわけではなく、極限のプレッシャー下で「アウトサイドで流し込む」という最も難易度の高い最適解を選択した結果のミスでした。
元日本代表のチームメイトたちも「柳沢の動き出しがあったからこそ生まれた決定機であり、彼を責めることはできない」と口を揃えて証言しています。ネットミームとして定着した言葉の裏には、世界トップレベルの戦術眼を持っていたがゆえの刹那の葛藤が存在していました。