難関を突破した先に待つ果実について、「社労士は稼げない」「AIに代替されて仕事がなくなる」といったネガティブな言説が散見されます。しかし、社会保険労務士の年収実態と現場の評判を精査すると、二極化の構図が見えてきます。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査等のデータから推計される勤務社労士の平均年収は約500万〜650万円です。大手上場企業の人事部や法務部でマネジメント層に就く場合は800万〜1000万円を超えるケースも珍しくありません。一方、独立開業社労士の年収は300万円未満から数千万円まで極端に広がっています。
「資格を取っても食えない」と評される背景には、手続き代行(1号・2号業務)だけを受注する旧来型のビジネスモデルが、電子申請の普及や人事労務SaaSの台頭によって低価格競争に晒されている事情があります。定型的な書類作成業務に依存している事務所は、確かに厳しい収益構造に直面しています。
対照的に、近年需要が急伸しているのが「3号業務」と呼ばれるコンサルティング領域です。ESG投資の普及による人的資本の情報開示、ハラスメント防止対策の設計、複雑化するシニア層の雇用延長スキーム、高度プロフェッショナル制度の運用など、経営戦略に直結する労務アドバイザリーを手がける社労士は、顧問料を高単価で維持しています。「取れば自動的に儲かる資格」ではないものの、「企業の急所である人命・法令遵守を支える専門家」としての市場価値は、むしろ右肩上がりに高まっています。