都内の足の外科専門外来やスポーツ整形外科の現場を取材すると、受診する患者の多くが共通の初期行動を取っていることが浮き彫りになります。SNSや知恵袋、コミュニティフォーラムを精査しても、「足の外側が痛むが、腫れが引くまで湿布を貼って我慢した」「捻挫癖があるため放置していたら、ある日激痛で立てなくなった」といった声が膨大に確認できます。
日本足外科学会に所属する専門医は、現場の危機感を次のように語ります。
「初診時に『階段を踏み外したわけでもないのに骨折しているはずがない』とおっしゃる患者さんが非常に多いのです。しかし、日常的なランニングや立ち仕事、硬いアスファルト上でのウォーキングの積み重ねによるメカニカルストレスこそが疲労骨折を引き起こします。特に第5中足骨基部のジョーンズ骨折は、血流が極めて乏しい移行部(watershed area)に生じるため、一度骨折線が完全に開いてしまうと偽関節となり、自力で骨がくっつかなくなります。プロアスリートであっても競技復帰に半年以上を要し、一般の方でもスクリューを入れる観血的手術が必要になる代表的な疾患です」
実際に、30代の市民ランナーの手記には痛烈な後悔が綴られています。
「最初は『足の甲 外側 押すと痛い』程度で、走れないわけではありませんでした。痛みを誤魔化すために外側に体重を逃がすような不自然なフォームで走り続けた結果、練習中にパキッと嫌な音がして歩行不能になりました。診断は第5中足骨の完全骨折。即入院・手術となり、仕事も1ヶ月間休職せざるを得ませんでした。初期の鈍痛の段階で整形外科に行っていれば、2週間の安静だけで済んだはずでした」
このように、「歩けるから骨折ではない」という先入観は極めて危険です。疲労骨折は完全骨折と異なり、初期段階では痛みをこらえながら歩行できてしまう点に最大の罠が潜んでいます。