最前線の小動物獣医療に携わる獣医師たちは、極端な小型化に伴う構造的な健康被害に強い懸念を示している。柴犬という中型狩猟犬の骨格を無理やり縮小したことで、生体力学的な歪みが内臓や関節に集中しているためだ。動物病院の診察台には、生後数ヶ月で歩行困難に陥る幼犬が後を絶たない。
特に頻発しているのが膝蓋骨脱臼(パテラ)や股関節形成不全といった運動器疾患だ。細く脆い大腿骨と浅い関節窩は、日常的なジャンプやフローリングでの滑走だけで簡単に脱臼を引き起こす。さらに深刻なのは、頭蓋骨の小型化に対して脳の容積が追いつかず、脳脊髄液が頭蓋内に滞留する水頭症の発症リスクだ。歩行障害、視覚障害、突発的なてんかん発作に苦しむ個体は少なくない。
悪質な繁殖現場では、食事制限によって母犬の胎盤内で胎児の発育を遅らせる「人為的低体重児」の作出や、遺伝疾患を持つ個体のインブリード(近親交配)が平然と行われている実態がある。小さく生まれたのではなく、病的に小さく作られた個体を購入した飼い主は、生涯にわたる莫大な医療費と精神的負担を背負わされることになる。