物語の最大のドラマツルギーを担っていたのが、須王環の母親の真相と須王家の確執解消です。母エトワールは重い心臓の持病を患っており、静江から与えられた手切れ金によってフランスで療養生活を送っていました。しかし、物語後半、須王グループの経営危機や、静江が信用していた側近の裏切りによる横領事件が発生。祖母・静江は自らが信じた権力構造から失脚の危機に瀕します。
この危機的局面で動いたのが環でした。須王環と母親との再会の経緯は、打算や憎しみを一切交えない環の純粋な「家族への愛」によって手繰り寄せられます。自らを蔑み、母親と引き離した張本人である祖母に対し、環は恨み言をぶつけるどころか、窮地に陥った静江を心から案じ、須王家を救うために奔走しました。その無私の真心に打たれた静江は、数十年にわたる頑迷な心の鎧を脱ぎ捨て、ついに自らの過ちを認めるに至ります。
父・譲の周到な計らいとホスト部員たちの全面協力により、エトワールは密かに来日を果たしていました。最終局面、空港において静江の後押しを受けた環は、14歳以来ずっと会うことを禁じられていた最愛の母と涙の抱擁を交わします。「ずっと会いたかった」という言葉とともに母子の絆が再生された瞬間は、読者の涙腺を激しく揺さぶる名場面となりました。