テレビアニメ放送開始から長年にわたり実施されてきた公式のキャラクター人気投票や、玩具メーカーによる支持率調査において、極めて興味深い現象が確認されています。主人公であるアンパンマンが絶対王者として君臨する一方で、常に1位・2位を激しく争っているのがライバルのばいきんまんです。
一般的なヒーローアニメにおいて、悪役が主人公と同等の票を集めるケースは稀です。しかし本作におけるばいきんまんは、単なる邪悪の象徴ではなく、子どもたち自身の「等身大の分身」として受容されています。いたずらをして怒られ、失敗しても決して諦めずにメカを作り直し、何度吹き飛ばされても「バイバイキーン!」と元気に去っていく――。この驚異的なレジリエンス(立ち直る力)と、本能に従って行動するコミカルな姿に、子どもたちは無意識の親近感を抱きます。
さらに近年、凄まじい躍進を見せているのがだだんだんです。ばいきんまんが開発したロボット兵器でありながら、無機質さとどこか抜けた愛嬌を兼ね備えたそのビジュアルは、乗り物や恐竜を好む幼児層の心を鷲掴みにしています。子どもたちの心にある「物を壊してみたい」「大きな力で自己主張したい」という破壊と創造の欲求を、安全かつ魅力的に代弁してくれる存在として絶大な人気を誇っています。
女性キャラクターの動向も見逃せません。気まぐれで少しわがまま、しかし憎めない愛らしさを持つドキンちゃんは、長年女児のみならず大人の女性層からも支持を集めてきました。そして現在、その妹分であるコキンちゃんの人気が急上昇しています。「嘘泣き」によって周囲を翻弄し、涙を浴びた者を無理やり泣かせてしまう破天荒な能力を持ちながら、無邪気で天真爛漫なキャラクター性が現代の幼児たちのハートを直撃しています。心理学的に見れば、自立の初期段階における「思い通りにならない自己主張」を肯定的に投影できるアイコンとして機能していると考えられます。