物語序盤の鴨志田パレスにおいて、窮地に追い込まれたジョーカーが初期ペルソナ「アルセーヌ」を召喚する覚醒シーンは、シリーズ屈指の名場面として語り継がれています。顔に張り付いた白いドミノマスクを爪を立てて無理やり引き剥がすと、皮膚が裂けたかのように激しく鮮血が噴き出す演出は、初見のプレイヤーに鮮烈な衝撃を与えました。
この演出の根底にあるのは、心理学者ユングが提唱した「ペルソナ(社会適応のために被る仮面)」の概念です。理不尽な前科を着せられ、周囲から「問題児」として扱われる中で、彼は無意識のうちに社会へ従属するための分厚い仮面を貼り付けられていました。
自分自身を偽り、理不尽に耐えることでしか生きられなかった少年が、心の奥底にある「理不尽への怒り」と「反逆の意志」を取り戻す瞬間、その仮面はもはや顔の皮膚と同化しています。だからこそ、それを剥ぎ取る行為には激しい肉体的苦痛と出血が伴うのです。血を流しながら不敵に笑うジョーカーの表情は、痛みを乗り越えて真の自我を手に入れた解放の象徴にほかなりません。