NHKの人気自然番組『ダーウィンが来た!生きもの新伝説』が現地ロケを敢行した際、テレビ画面に映し出されたその生態は列島に大きな衝撃を与えました。番組内で克明に記録されたのは、冷たい水中で繰り広げられるオス同士の闘いの生々しい実態です。
水深の浅い岩の下は、メスが卵を産み付けるための特等席であり、オスの縄張りとなります。条件の良い産卵場所を奪い合う際、オス同士は正面から組み合い、レスリングのように互いをホールドします。そして、口元の鋭利なトゲを相手の喉元や眼球の周囲、腹部めがけて容赦なく突き刺し合うのです。
研究者が現場で捕獲した繁殖期のオス個体からは、トゲによって開けられた無数の裂傷や血のにじんだ痕が確認されています。傷口から感染症を起こして命を落とす個体すら存在するほど、その戦いは壮絶を極めます。過酷なバトルを制した勝者だけが岩穴を占有し、現れたメスと交尾を行う権利を獲得します。さらに、卵が孵化するまでの約1か月間、オスはその場に留まり、外敵から卵塊を必死に守り抜くという献身的な父親の一面も持ち合わせています。