なぜ電気診を行わなければならないのか。その最大の理由は、「残せるはずの神経を誤って抜いてしまう事故」と「壊死した神経を放置して顎骨内で化膿させてしまうリスク」の双方を防ぐためです。
歯髄の病変は大きく「可逆性歯髄炎(回復可能な炎症)」と「不可逆性歯髄炎(回復不能な炎症)」、そして「歯髄壊死(神経の壊死)」に分かれます。可逆性であれば神経を残す保存療法を選択できますが、不可逆性または壊死に至っている場合、放置すると根尖病変(歯の根の先に膿が溜まる病気)を引き起こし、激痛や歯槽骨の破壊へとつながります。
根管治療の診断基準において、電気診で全く反応が消失している(最大通電でも無反応)状態は、歯髄壊死を裏付ける強力な根拠となります。外見上は虫歯が見当たらなくても、過去の打撲やクラウン内部の二次虫歯によって知らぬ間に神経が死んでいるケースは少なくありません。神経を失った歯は血流供給が途絶えるため、時間とともに脆くなり破折リスクが跳ね上がります。精密な電気診は、歯の将来的な寿命を左右する「抜髄か温存か」の岐路において不可欠な砦となっているのです。