本作を語る上で欠かせないのが、主演の佐藤健と兄役の鈴木亮平が見せた、演技の域を超えたフィジカルな挑戦です。当時のメイキング映像や現場取材の回想録を通じても、両名が背負ったプレッシャーは並大抵のものではありませんでした。
篤蔵を演じるにあたり、制作陣から事前に提示された「調理シーンの吹き替え・代役手元カット」の提案を、佐藤健は毅然として断りました。クランクインの約半年前にあたる2014年夏から辻調理師専門学校に通い詰め、包丁の握り方から姿勢、視線の落とし方に至るまで徹底的な指導を受けています。
当時、現場指導を担当した料理監修陣の証言によると、佐藤は自宅でも毎日段ボール箱いっぱいのタマネギとジャガイモを取り寄せ、映画や別作品の合間を縫って千切りとシャトー剥き(面取り)を反復練習していたといいます。劇中で見せた高速みじん切りやオムレツを返す流麗な手さばきは、特撮や編集によるごまかしを一切排除した正真正銘の本人実演でした。
一方、兄・周太郎役の鈴木亮平が敢行した肉体改造は、日本のエンタテインメント史に残る過激なものでした。当時すでに『TOKYO TRIBE』などで屈強な肉体を誇っていた鈴木は、まず役に合わせて体重を一度増やした状態から、病床で結核に冒され死に近づいていく周太郎を演じるため、わずか半年間で約20kgの減量に挑みました。
「このドラマに自分の俳優人生のすべてを懸ける」と語った鈴木は、医師の管理下に入りながら徹底したカロリー制限と水分調整を実施。撮影終盤には骨が浮き彫りになり、声の張りを失っていく姿がそのままフィルムに焼き付けられました。鈴木自身が後のロングインタビューで「空腹で感情が削ぎ落とされ、周太郎の静かな覚悟と精神が自然に入り込んできた」と振り返った通り、この凄まじい執念が視聴者の胸を打つ名場面を生み出しました。