古典文学の世界で燦然と輝く「いとをかし」というフレーズは、文法的に分解すると2つの古典単語から成り立っています。
まず「いと」は、現代語の「たいそう」「非常に」「とても」に相当する副詞です。そして「をかし」は、平安貴族の知的な感性を支えたシク活用の形容詞(基本形:をかし)です。つまり品詞分解としては「副詞+形容詞」の構成であり、直訳すれば「非常に趣深い」「とても魅力的である」となります。
語源の有力な説とされているのが、動詞の「招く(をく)」から派生したという説です。対象が魅力を放ち、こちらの心をぐいぐいと手招きして引き寄せる心理状態を表していました。単に「美しい」と眺めるだけでなく、「思わず見入ってしまう」「知的好奇心がくすぐられる」という動的な心の動きを捉えた言葉なのです。