男闘呼組を取り巻く言説の中には、長年拭えなかった「ある誤解」が存在していました。それは「ジャニーズ事務所のアイドルなのだから、レコード音源の演奏はスタジオミュージシャンによる当て振りで、本人たちは弾いていなかったのではないか」という穿った見方です。
しかし、当時のレコーディング関係者の証言や残されたトラックデータを検証すると、実態は全く異なります。結成当初こそ基礎技術の習得に時間を要したものの、デビュー前から彼らは連日スタジオに缶詰めとなり、凄腕のプロからスパルタ式の猛特訓を受けていました。とりわけ成田氏のリードギターと高橋氏のベースラインへのこだわりは凄まじく、「TIME ZONE」のレコーディング期にはすでにプロミュージシャン顔負けのグルーヴとトーンを自らの手で生み出していたのです。
また、当時のロック界には「テレビに出る芸能人がロックを名乗るな」という排他的な空気が根強くありました。しかし彼らは、歌番組の生放送であっても徹底して生演奏・生歌にこだわり続けました。アンプから直接鳴らされる爆音と歪みは、当時の歌謡界の音響スタッフを何度も慌てさせたと伝えられています。見た目の華やかさゆえに正当な評価が遅れたものの、彼らが鳴らしていたのは紛れもない「本物のロック」であり、商業主義の枠組みの中でギリギリの闘争を繰り広げていた表現者だったのです。
【プロの結論】「TIME ZONE」がRockon Social Clubへと受け継がれたロック社会学的意味
男闘呼組の期間限定活動が2023年8月にピリオドを打った後、彼らはプロデューサー・寺岡呼人氏やドラマー・青山英樹氏らを迎えた新バンド「Rockon Social Club」へと発展的進化を遂げました。この新バンドのステージでも、「TIME ZONE」は極めて重要なレパートリーとして演奏され続けています。
芸能社会学の視点から見ると、これは日本のショービジネスにおける極めて先進的な「自立モデル」と言えます。従来のアイドルシステムでは、所属事務所の庇護下で若さを消費されたタレントは、年齢とともに役者や司会業へ転向するか、表舞台からフェードアウトするのが通例でした。しかし男闘呼組のメンバーは、四半世紀以上のブランクや個々の苦難を乗り越え、自らの手で楽器を鳴らし直すことで「大人のロックバンド」としてのアイデンティティを確立しました。かつての管理された枠組みから脱却し、健全な表現者としてのバウンダリー(自立した境界線)を再構築した姿が、Rockon Social Club TIME ZONEのアップデートされた響きに結実しているのです。
【本作を聴くべき人・慎重になるべき人の判断基準】
- 今すぐ聴くべき人:
- 80〜90年代の骨太なハードロック、メロディアスなギターリフを愛するリスナー
- 作られたアイドルポップスではなく、生々しいバンドアンサンブルの気迫を体感したい人
- 人生の挫折やブランクを乗り越えて円熟味を増した「大人のロック」に触れ、活力を得たい人
- 慎重になるべき人(好みが分かれる可能性がある人):
- 現代のデジタルクオンタイズ(完全補正)された打ち込みサウンドや、洗練されたEDM調を求めるリスナー
- 80年代特有の歌謡曲的哀愁メロディや泥臭いロック美学に気恥ずかしさを感じてしまう人