大阪市平野区平野本町に位置する全興寺は、高野山真言宗に属する寺院です。その起源は飛鳥時代、西暦593年頃に聖徳太子が薬師如来の像を安置したことに始まります。この地に人々が集まり、町が形成されたことから「平野発祥の地」とも称される由緒正しい歴史を誇ります。
由緒ある古刹が、なぜこれほど強烈な「地獄体験」の寺へと変貌を遂げたのか。その背景には、現住職・川口良仁氏による深い教育的信念と地域振興への情熱が存在します。昭和後期、子どもたちのいじめ問題や命を軽視する風潮、希薄化する地域コミュニティに強い危機感を抱いた住職が、「悪いことをすれば地獄へ落ちる」「命は一つしかない」という仏教の根本原則を直感的に伝えるべく、1989年に「地獄堂」を境内に建立しました。
単なる観光向けアトラクションではなく、「死生観を学び、今生きている日常を大切にする」という仏教本来の教えを、現代の子どもや若者に響く体験型空間として再構築した結果が、現在の全興寺の姿です。