釣り場での観察調査において、釣果に恵まれない釣り人の約7割が犯している共通の過失が「アジの取り扱いミス」です。水産系研究機関の知見によれば、変温動物である魚類にとって、体温36度の人間の手のひらで直に触れられることは、人間で言えば高熱のアイロンを押し当てられるに等しい熱傷ダメージを受けます。触られた箇所のウロコが剥がれ、粘膜が破壊されたアジは、海中に戻した数分後には急速に活力を失い、海底で横たわってしまいます。
現場で生き生きと泳がせ続けるための鉄則は、まず手を海水で十分に冷却すること、あるいは濡らした専用メッシュグローブやアジ掴み器を介して素早く作業を完了させることです。作業時間は5秒以内が限界値です。
さらに、ターゲットと状況に応じた活きアジ針の付け方の使い分けが勝敗を決定づけます。
- 鼻掛け(青物・遠投・長時間遊泳向き):アジの両目の前にある硬い鼻腔(軟骨部)に針先を横から通す手法。口を塞がないため呼吸が阻害されず、もっとも長く元気に泳ぎ続けます。前進運動に対する引き抵抗が少ないため、エレベーター仕掛けや流す釣りに最適です。
- 背掛け(中層キープ・ヒラメ狙い):背ビレの前方、側線より上の筋肉の薄い部分に薄く針を通す手法。アジが下へ下へと潜ろうとする習性を引き出すため、底付近に潜むヒラメや根魚に対して強烈なアピール力を発揮します。深く刺しすぎて背骨(脊髄)を傷つけると即死するため、ミリ単位の精度が求められます。
- ゼイゴ掛け(ぶっこみ・ショートバイト対策):尾の付け根にある硬い鱗骨(ゼイゴ)に通す手法。キャスト時の身切れを防ぎやすい利点がある反面、アジの遊泳姿勢が不自然になりやすいため、近距離戦のぶっこみ仕掛けに限定して採用するのが賢明です。