取材班が休職経験者やSNS、コミュニティに寄せられた数百件の手記を詳細に分析すると、自律神経失調症で休職に至る労働者に共通する特異な心理パターンが浮かび上がってきます。それは外部からの批判ではなく、「自分自身が自分を『甘え』と責め立ててしまう内なる自責思考」です。
自律神経失調症は、骨折や出血のように外見から病状を視認することができません。ある30代のシステムエンジニア男性は、当時の手記で次のように赤裸々に告白しています。
「熱を測っても36度台。血液検査も異常なし。それなのに朝起きると呼吸が浅くなり、胃液が逆流して玄関のドアノブを握れなくなる。会社の上司に『熱もないのに休むのか』と思われるのが怖くて、休職の診断書を鞄に入れたまま2週間も言い出せなかった。休職初日、自室の天井を見上げながら感じたのは、安堵ではなく『自分は社会から脱落した落伍者だ』という強烈な罪悪感だった」
現場の実態として、休職に入った最初の2〜3週間は、交感神経の緊張が解けずに不眠が悪化したり、会社携帯やチャットの通知音に過剰反応して動悸を起こしたりするケースが極めて多く見られます。厚生労働省の労働安全衛生調査等の動向を照らし合わせても、メンタルヘルス不調や自律神経系の異常で休職する従業員は年々高止まりしており、これは個人の忍耐力や資質の問題ではなく、過度な業務密度と慢性的な生体リズム破壊が生み出す構造的な職業病であるというのが、産業保健現場における定説です。