近年、釣果として手に入ったアカエイや鮮魚店で入手した新鮮なヒレを使って、自宅で乾物作りに挑戦するDIY志向の料理人が増えています。しかし、水産加工の基本を誤ると、室内中に悪臭が充満する大惨事になりかねません。プロの加工現場の知見に基づく、安全で失敗しないエイの干物の作り方を公開します。
最大の鉄則は、「水揚げ直後、もしくは死後硬直前の超高鮮度なヒレのみを使用すること」です。ネット上では「少し古くなったエイも干物にすれば臭いが飛ぶ」という危険な誤解が散見されますが、これは完全な間違いです。一度アンモニアが発生してしまったヒレを乾燥させても、水分が抜けるにつれてアンモニア濃度が濃縮され、食用に耐えない劇物のような悪臭を放つ干物になってしまいます。
具体的な自家製エイヒレの干し方の手順は次の通りです。
鮮魚からヒレを切り離したら、まず表面のヌメリを金属たわしや包丁の背で徹底的に削ぎ落とします。皮を剥ぎ、軟骨と肉の断面を露出させたら、氷水で手早く血抜きを行います。調味液(酒:みりん:醤油を2:2:1の比率で合わせ、少量の砂糖を加えたもの)に漬け込む時間は、身の厚さに応じて2時間〜4時間程度が目安です。
乾燥工程では、直射日光に当てる天日干しは絶対に避けましょう。気温が高い環境下では乾燥中にアンモニア発酵が進んでしまうため、風通しの良い日陰、あるいは冷蔵庫内でのピチットシート(脱水シート)乾燥を選択するのが現代のベストプラクティスです。扇風機の風を当てて一晩から丸一日、表面が指で触れてベタつかず、指圧すると弾力を持ってへこむ半乾き(水分率20%前後)の状態に仕上げるのが、極上の自家製エイヒレを完成させる秘訣です。