DIY愛好家が集うオンラインコミュニティや大手Q&Aサイトを検証すると、「回す方向は合っていたはずなのにネジ山が削れて丸くなってしまった」「ドライバーが空回りしてネジ頭をなめてしまった」という悲痛な相談が後を絶ちません。ネジ頭をなめてしまう最大の原因は、回す方向の間違いではなく、プラスドライバーの使い方における初歩的なミスに起因しています。
国内大手作業工具メーカーのエンジニアが公開している実験データによると、ネジ溝破損事故の約7割以上が「ドライバー先端の番手(サイズ)不一致」によって起きています。プラスドライバーには「No.1(PH1)」「No.2(PH2)」「No.3(PH3)」といった厳格なサイズ規格が存在します。一般的なカラーボックスや家電製品の多くには「No.2」が使われていますが、手元にあった一回り小さい「No.1」のドライバーで回してしまう人が後を絶ちません。隙間が生じた状態で強い力を加えると、回転トルクを受け止めきれず、先端が浮き上がってネジ頭を削り飛ばしてしまいます。これを工学用語で「カムアウト現象」と呼びます。
プロの整備士が実践するネジ山を潰さないコツの根幹は、「押し7割、回し3割」の荷重バランスにあります。ドライバーをネジ頭に垂直に当て、体重をかけて奥へ押し付ける力を全体の70%、回転させる力を30%に配分します。多くの初心者は「回すこと」に9割の意識を割いてしまい、押し付け圧力が抜けた瞬間にカムアウトを発生させます。作業時は必ずネジに対してドライバーの軸を1本の直線のように垂直に保ち、押し込みながらゆっくりとトルクを立ち上げることが鉄則です。