血脈の妙も、彼の唯一無二の存在感を説明するうえで欠かせない要素だ。曽祖父と祖父が清元節の三味線奏者であり人間国宝という邦楽の家系。和の音色と間(ま)を日常として呼吸してきたバックボーンは、彼の表現に深層的な深みを与えている。
西洋発祥の現代ミュージカルを完璧な歌唱力で乗りこなしながら、セリフの「タメ」や視線の落とし方には日本人固有の情念が宿る。型を知り尽くした者だけが到達できる、型を破る演技。洋の東西を問わず、古典と現代劇の交差点にすっくと立つその姿は、日本の演劇界における極めて貴重な財産と言えるだろう。