東声会の歴史を紐解く上で、避けて通れないのが創設者・町井久之(本名・鄭建永)の存在です。1923年に東京で生まれた町井は、第二次世界大戦後の極度の混乱と治安の空白期において、卓越した統率力と冷徹な判断力で頭角を現しました。町井久之の経歴における原点は、終戦直後の焼け野原となった東京・銀座や新橋の闇市警備にあります。
当時、敗戦によって生じた権力の空白地帯では、三国人(在日朝鮮人・台湾人ら)グループと既存のテキヤ・博徒組織による縄張り争いが激化していました。町井は1947年(昭和22年)、在日朝鮮人の若手を中心とした治安維持・自衛組織として「東声会」の前身を結成します。民族的な差別や生活苦に直面していた若者たちを束ね、規律と武力を持たせることで、急速に勢力を拡大していきました。
町井が率いる部隊は、銀座の飲食街やクラブ街を瞬く間に掌握し、治安当局からも「銀座の虎」「銀座の黒幕」として一目置かれる存在となります。武闘派としての暴力性だけでなく、秩序を守る調停者としての役割を果たすことで、東声会と銀座の街は不可分の関係を結ぶことになりました。