事件の犠牲となった男性たちは、決して愚か者ではなかった。むしろ、社会的地位があり、真面目に生きてきた人々が多かった。彼らが罠に落ちた最大の要因は、「家庭的な温もり」や「自分を肯定してくれる存在」への強い渇望である。木嶋死刑囚は、手料理や細やかな気配りといった、古典的でありながら強力な「理想の家庭像」を提示することで、男性たちの警戒心を完全に解いた。
人は孤独の極みにあるとき、差し伸べられた手の温もりだけを信じてしまう。たとえその先に奈落の底が待っていようとも、目の前の甘い現実から目を背けたくなるのだ。この心理的盲点は、どれほどテクノロジーが進化しようとも、人間に組み込まれた根源的な弱さである。