なぜ水は重力に逆らい、数十メートルの高さまで昇り切ることができるのか。その核心にあるのが「凝集力説」だ。水分子は水素結合によって、互いに強く引き合う性質を持つ。この引き合う力は驚くほど頑丈で、細い管の中では細い鋼鉄のワイヤーのように一本の「水柱」を形成する。
葉の先から水分が外へ引っ張られると、その張力が水柱を通じて根の先まで一瞬で伝わる。まるで井戸から長いロープを一気に手繰り寄せるような連鎖反応だ。教科書では単なる「水の移動」と簡単に片付けられがちだが、内部では大気圧の何十倍もの張力(陰圧)が発生しており、人工の送水管なら一瞬で押し潰されかねない過酷な物理環境を植物は易々と維持している。