画面を通じて口元の隙間が露呈するたび、ネット上で大きな話題を呼ぶ「歯がない芸能人」たち。なぜ彼らは痛みや見た目の悪化を顧みず、取り返しのつかない段階まで口内を放置してしまったのか。取材を進めると、そこには単なる無頓着では片付けられない、3つの構造的な要因が浮かび上がってきます。
第1の要因は、若手時代・下積み時代における極限の経済的困窮です。多くの芸人が口を揃えるのは、「日々の食事代や家賃の支払いに追われ、健康保険料の支払いや歯科の窓口負担(3割)すら捻出できなかった」という現実です。痛みに襲われても市販の鎮痛薬で誤魔化し、受診を先延ばしにするうちに虫歯菌が歯冠部を侵食し、最終的に歯根しか残らない状態へと陥っていきます。
第2の要因は、医学的なメカニズムに起因する歯髄壊死(しずいえし)の落とし穴です。虫歯が進行して歯の神経(歯髄)に到達すると耐え難い激痛が走りますが、さらに放置を続けると神経自体が壊死し、ある日突然痛みがピタリと止まります。患者本人は「治った」と錯覚しますが、実際には骨の中で病巣が拡大し、残った歯の組織がボロボロと崩れて脱落を招く結果となります。
第3の要因として見逃せないのが、歯科恐怖症(デンタルフォビア)とセルフネグレクトです。過去の治療で経験した激痛や削る音への極度のトラウマから、受診自体に強いパニックを覚える人が存在します。さらに、生活の乱れから「自分の身体をケアする気力を失う」セルフネグレクト状態に陥り、気付いたときには複数の歯が失われていたというケースが後を絶ちません。