方向を正しく理解していても、なお立ちはだかるのが「固着(こちゃく)」という物理的障害です。大手自転車ショップの現場チーフメカニックは「購入から1年以上ペダルを外した形跡のない車体の持ち込みでは、半数以上でペダル軸がクランクと癒着している」と証言します。
大手ネット掲示板やSNS上でも、ペダル交換に挑んだサイクリストたちの生々しい苦悶の声が多数寄せられています。
「フラットペダルからシマノのSPD-SLへ交換しようと安物の六角レンチで挑んだ結果、レンチがグニャリとしなり、勢い余ってアウターチェーンリングの歯に拳を強打。流血沙汰になった」(20代・男性ローディ)
「どれだけ体重をかけても緩まないため、レンチをハンマーで乱打したところ、六角の穴が完全に丸く削れて工具が空転する悪夢の事態に。結局クランクごとショップへ持ち込む羽目になった」(30代・トライアスリート)
こうしたトラブルの背景にあるのは、単なる締め付けトルクの強さだけではありません。ペダル軸に使われる「クロムモリブデン鋼(スチール)」と、クランクアームに使われる「アルミニウム合金」という異種金属が接触し続けることで生じる電食(異種金属接触腐食)が大きな原因です。雨水や汗に含まれる塩分がネジ山に浸入すると、金属同士が電子レベルで酸化結合し、あたかも溶接されたかのように強固に一体化してしまうのです。