瞳の色は、絵の具のように青や緑の「色素」が虹彩に直接塗られているわけではありません。眼球の前面にある「虹彩(こうさい)」に含まれるメラニン色素の量と、光の物理的現象であるレイリー散乱の相互作用によって生み出されます。
虹彩の組織は、前層(間質)と後層(上皮)に分かれています。後層には人類のほぼ全員にメラニン色素が存在しますが、色の明暗を決定づけるのは前層(間質)にあるメラニンの密度です。
- 茶色の瞳:間質に大量のユーメラニン(黒〜褐色色素)が存在し、外から入る光を吸収するため、そのまま濃い茶色に見えます。
- 青い瞳:間質にメラニンがほとんど存在しません。光が間質の微細構造を通過する際、波長の短い青い光だけが強く散乱され、青く発色して見えます(空が青く見えるのと同じ物理現象です)。
- 緑の瞳:少量のメラニン色素(リポクロームなどの黄色色素を含む)が存在し、そこに青い散乱光が混ざり合うことで、黄色+青=緑色として知覚されます。
- 琥珀色の瞳(アンバー):黄色〜金色の色素成分「リポクローム(リポフスチン関連物質)」が沈着し、澄んだ単色のイエロー・ゴールドを放ちます。
遺伝子の観点では、第15染色体上にあるOCA2遺伝子と、その発現スイッチを司るHERC2遺伝子の相互作用がメラニン合成量を強力に制御しています。研究者らのゲノム解析により、青い瞳を持つ現代人はすべて、数千年前の黒海沿岸に生息していた「HERC2遺伝子の特定箇所に変異を持った単一の共通祖先」から派生したことが証明されています。