白酒が手がける古典落語は、登場人物全員の思考回路が少しずつずれており、そのズレが雪だるま式に膨らんでいく快感に満ちています。数あるレパートリーのなかでも、絶対に聴いておくべき傑作演目を厳選して紹介します。
1. 『壺算(つぼざん)』:屁理屈とテンポが生み出す白酒落語の金字塔
買い物下手の男が、値切り上手の友人を連れて瀬戸物屋へ水瓶(壺)を買いに行く定番の滑稽噺。白酒の演じる友人は、親切そうに見えて恐ろしく図々しく、屁理屈を機関銃のように浴びせて店主を煙に巻きます。店主が次第に計算の混乱に陥り、頭を抱えていく心理描写のグラデーションは圧巻。客席が笑いで揺れる、白酒落語の代表作中の代表作です。
2. 『木乃伊取り(みいらとり)』:放蕩息子と堅物番頭の逆転劇
吉原の遊郭に入り浸る若旦那を連れ戻しに向かった真面目一本槍の番頭が、酒と女の魅力に搦め捕られていく滑稽噺。白酒の手にかかると、酒を一滴も飲めなかった番頭が徐々にほろ酔いになり、快楽に身を委ねていくグラデーションが実に人間らしく、愛らしく描かれます。
3. 『明烏(あけがらす)』:堅物青年の覚醒を描く名作
真面目すぎて遊びを知らない若旦那を、町内の遊び人二人が騙して吉原へ連れて行く物語。翌朝、すっかり別人のように色気に目覚めた若旦那の変わりようを、白酒は抜群の表情と声色で演じ分けます。古典の型を守りながら、現代人の感覚に響くテンポで見せる手腕は見事というほかありません。
4. 『だくだく』『富久』:ナンセンスな笑いから情感豊かな大ネタまで
泥棒が入っても盗るものがない貧乏長屋の住人が、家財道具の絵を壁に描き殴り、泥棒と「つもり」でやり取りするシュールな『だくだく』も絶品です。一方で、年末の風物詩である『富久』などでは、人間の愚かしさと温かさを巧みに織り交ぜ、単なる爆笑にとどまらない深い余韻を残します。