音楽ストリーミングやSNSの普及により、過去の名曲が突然掘り起こされる現象は珍しくなくなりました。しかし、倖田來未が歌う『め組のひと』が巻き起こしたムーブメントは、その規模と波及力において極めて特異な事例として記録されています。
この再ブレイクが本格化したのは2018年春から夏にかけてのことでした。当時、中高生を中心に利用者を急拡大させていたTikTokにおいて、倖田來未版の音源をピッチアップ(高速再生)した「倍速音源」がユーザーによって投稿されたことが発端となります。テンポが上がったことでコミカルさと疾走感が増し、そこに曲中の決め台詞である「めッ!」の瞬間に目元でピースサインを横にする直感的な振り付けを合わせた動画が瞬く間に拡散されました。
ユーザー生成コンテンツ(UGC)の総再生回数は億単位に達し、当時まだ原曲を知らなかった10代のリスナーが「この中毒性のある曲は誰の歌なのか?」と検索を開始。その結果、配信チャートで倖田來未の音源がトップ10圏内に急浮上するという、デジタル時代の典型的な逆走ヒットを記録したのです。