音楽理論の観点から本作を紐解くと、TAKUYAというギタリストの規格外な才能が随所に刻み込まれていることが分かります。本作のキーはEメジャー。ギターという楽器の構造上、低音弦の開放弦を自由に鳴らせるEのキーは、ロックにおいて王道中の王道です。しかし、TAKUYAのコードアプローチは単なるパワーコードの連打とは一線を画していました。
イントロから鳴り響く特徴的なカッティングでは、ルート音に対して9thやadd9といった豊かなテンションノートが巧みに組み込まれています。フェンダー・テレキャスター特有のエッジの効いたトーンをベースに、コードフォームを崩しながら高音弦を煌びやかに鳴らすボイシングは、後のギターロックバンドに計り知れない影響を与えました。サビ前の「遠くまで見える道で」から一気に視界が開けるような転回、ベースライン(恩田快人)とドラム(五十嵐公太)が織りなす8ビートの躍動感は、まさに職人技の結晶です。
そして、その複雑なサウンドスケープの上を自在に飛び跳ねるのがYUKIのボーカルです。「くじら12号 歌詞」の魅力は、耳心地の良い母音の配置と、子音を小気味よく弾くリズミカルな歌唱法にあります。「イルカの群れ」「見上げたらひこうき雲」など、誰もが心の中に持っている青春の原風景を、子供のような無邪気さと大人のセンシティブな叙情性を交差させて描き出しました。