ネット上の口コミや知恵袋を覗くと、「2時間の予定が夕方までかかった」「半日有休を取っていたのに丸一日潰れた」といった現場の悲鳴が散見されます。事前の見積もり段階で示される時間は、あくまで「既存の配管・配線に一切のトラブルがなく、ボルト1本までスムーズに外れた場合の最短コース」に過ぎません。
住宅設備工事の現場取材で見えてきた、作業時間が大幅に延びる「4大要因」を紐解きます。
第一の要因は、配管の経年劣化と錆付きによる手戻りです。10年以上風雨に晒された給水管や給湯管は、バルブや継ぎ手が固着しています。無理に力を加えると古い配管自体が根元から破断し、床下や壁内での大規模な水漏れを引き起こすリスクがあるため、職人はバーナーで炙ったり浸透潤滑剤を使ったりしながら、ミリ単位の慎重さで作業を進めます。もし配管が腐食していれば、急遽一部の配管を切り回して架橋ポリエチレン管で引き直す追加工事が発生し、これだけで1〜2時間が吹き飛びます。
第二に、狭小搬入路と障害物の存在です。戸建て住宅で建築後にエアコン室外機や物置、テラス屋根を増設した結果、給湯器の搬出入ルートが塞がれている現場は少なくありません。重量40〜80kgある機器を頭上に持ち上げてフェンス越しに手送り搬入したり、室外機を一度取り外したりする予期せぬ工程が追加されます。
第三に、室内リモコン線の断線と壁内埋設トラブルです。台所や浴室のリモコンを新品に付け替える際、壁の中を通っている古い通信線が断熱材に挟まれて引っ張り出せなかったり、経年劣化で被覆がボロボロになって断線したりするトラブルが多発します。配線の導通確認とルート引き直しに職人が頭を抱える時間は、見積もり時には計算に入っていません。
第四に、厳格化されたガス漏れ・電気保安検査です。施工後の気密試験において、微細な圧力降下が検知された場合、原因箇所を特定して再施工するまでガスを通気することは法令上許されません。安全担保のための不可欠な時間ですが、これが完了しない限り引き渡しはできないのです。