インターネット上の言論空間で飛び交う外患誘致罪の言説には、法律実務の観点から見て看過できない数々の重大な誤解が蔓延しています。
誤解1:「親中派・親韓派とされる政治家の言動は外患誘致罪になる」というデマ
外交交渉における妥協、他国との経済連携、あるいは安全保障政策に対する反対意見を述べることは、憲法で保障された政治活動・表現の自由の範疇です。いかに特定の国に有利に見える政策主張であっても、「外国と通謀して日本にミサイルを撃ち込ませる」「他国軍を侵攻させる」という具体的かつ直接的な謀議が存在しない限り、外患誘致罪の構成要件には1ミリもかすりません。
誤解2:「告発状を提出すれば、警察や検察は必ず捜査しなければならない」という錯覚
刑事訴訟法上、告発状が提出されても、犯罪事実の特定が極めて不十分であったり、法的構成要件を明らかに欠いていると捜査機関が判断した場合、告発状は正式受理されず返戻(不受理)されます。ネット上に告発状の控えをアップロードして「告発を受理させた」と主張する投稿が見られますが、それは単に「書類が窓口に届いた(受領)」という物理的事実を示しているに過ぎず、事件として正式捜査が開始されたこととは全く意味が異なります。
誤解3:「告発する側に法的リスクはない」という危険な思い込み
全く根拠がないことを知りながら、あるいは重大な過失によって他人を刑事処分に陥れる目的で告発状を提出した場合、告発者自身が刑法第172条の「虚偽告訴等罪(3月以上10年以下の懲役)」に問われるリスクがあります。また、告発した事実をネット上に実名付きで晒せば、民法上の不法行為(名誉毀損)として高額な損害賠償責任を免れません。