中指を立てる風習は、決して現代のアメリカ映画が作った薄っぺらなカルチャーではありません。その起源は驚くべきことに2500年以上前の古代ギリシャ・古代ローマ時代まで遡ります。
古代ローマにおいて、中指はラテン語で「ディギトゥス・インパディクス(digitus impudicus=恥知らずな指、淫らな指)」と呼ばれていました。当時の風刺詩人マルティアリスの文献にも、他者を威嚇し邪眼を払うために中指を突き出す記述が明確に残されています。古来より地中海世界では、相手を性的に服従させる意思表示としてこの指が使われていたのです。
中世に入ると、もうひとつの有名な歴史的エピソードが登場します。1415年の英仏百年戦争における「アジャンクールの戦い」にまつわる伝承です。当時、恐るべき射程と威力を誇ったイングランド軍の長弓兵に対し、フランス軍は「捕虜にしたら弓を引けないよう、中指(あるいは人差し指と中指)を切り落としてやる」と脅迫していました。これに勝利したイングランド兵が、無傷の中指をフランス軍に見せつけて挑発したことが由来であるとする説が長く語り継がれています。学術的には古代ローマ起源説が本命とされていますが、戦場における「屈辱の象徴」として定着した歴史の重みは見逃せません。