「結婚式の男性は手ぶらで出席するのが正式なマナー」という言説を信じ、手ぶらで会場に向かおうとしているなら、少し立ち止まる必要があります。結論から言えば、形式上は手ぶら自体が即座にルール違反となるわけではありません。しかし、現実の装いにおいて「実質的なマナー違反」を引き起こす最大の要因になっています。
その決定的な理由が、スーツの美しいシルエットの崩壊です。フォーマルスーツは本来、身体に沿った立体的なカッティングによって威厳と清潔感を表現する衣服です。ところが、手ぶらで参列しようとすると、大型化したスマートフォン、厚みのある財布、ご祝儀袋(袱紗)、車のキーなどをすべてジャケットやスラックスのポケットに詰め込まざるを得なくなります。
ポケットに物を詰め込むと、胸元が不自然に突き出し、スラックスの太ももやヒップラインが突っ張り、歩くたびに重みで生地が引っ張られて無様なシワが刻まれます。服飾美学およびプロトコール(国際儀礼)の観点において、祝宴の場で服の仕立てを崩して着崩す行為は、新郎新婦に対する敬意を欠いた振る舞いと評価されます。
さらに見落とせないのが、ご祝儀袋の破損リスクです。袱紗(ふくさ)に包んでいたとしても、ジャケットの内ポケットに無理やりねじ込めば、水引が潰れたり角が折れ曲がったりします。お祝いの気持ちを包む金封を傷つけることは、明白な礼儀知礼にあたります。「ポケットを一切膨らませず、所作を美しく保つ」ことができない限り、大人の男性が手ぶらで参列するのは極めてリスクが高い選択肢なのです。