暴力で世界を統括しようとしたメルエムの運命を大きく変えたのは、東ゴルトー共和国の盲目の少女コムギとの出会いだった。盤上ゲーム「軍儀」の世界チャンピオンである彼女は、王の圧倒的な威圧感にも臆することなく、ただ純粋に盤上の対話を楽しんだ。全知全能であるはずの王が、ただ一人勝ち越すことのできない「弱者」。
名前すら持たなかった王に「メルエム(すべてを照らす光)」という名が与えられ、彼が自らの存在理由を悟ったのは、暴力の頂点に立った時ではない。毒に侵され、視力を失いながらも「コムギ、そこにいるか?」と問いかけ、コムギが「はいはい、いますよ」と答える最期の対話の瞬間だ。種族を超えた二人の絆は、強さの定義そのものを「暴力」から「心」へと再構築させた。