東宝の精鋭スタッフが集結して制作が進められた現場は、まさに命がけの実験場だった。報道カメラマンとして怪異に立ち向かう江戸川由利子を演じた桜井浩子氏は、当時のスタジオの熱気を「常気を逸していた」と回想する。照明の熱でスタジオ内の気温は40度を超え、着ぐるみの中から吹き出す汗と特薬煙幕のニオイが充満していた。NGを出せば高価なフィルムが無駄になる時代。フィルム1尺の重みが、新進気鋭の女優の肩に重くのしかかっていたのだ。
解禁された独占エピソードの中でも特に語り継ぐべきは、撮影現場における「演出の狂気」だろう。第1話「ゴメスを倒せ!」のロケ現場において、極寒のトンネル内で泥まみれになりながらもNGなしで一発OKを勝ち取った裏には、スタッフが仕掛けた「本物の恐怖」があったという。現場の緊迫感をリアルに引き出すため、事前の詳細な説明なしにミニチュア爆発を間近で炸裂させるなど、現代の安全基準では考えられない手法が日常茶飯事に行われていた。恐怖に歪む彼女のリアルな表情は、演技を超えたドキュメンタリーそのものだったのである。