「ネコ」という語は、動物そのものを指すだけでなく、江戸時代から現代に至るまで様々なコミュニティで隠語・スラングとして用いられてきました。特に現代のSNSや日常会話で登場する文脈は、主に3つの系統に分類されます。
第一に、同性愛カルチャー(特にゲイ・レズビアンコミュニティ)における役割を示す専門用語です。主導権を握る側・挿入側を「タチ(太刀・立ち)」と呼ぶのに対し、受け身側・包容側を「ネコ(猫)」と表現します。この対比は、気ままで受け身に見える猫の性質や、身体的ニュアンスから派生したものとされています。
第二に、伝統文化や花柳界(芸者町)に起源を持つ隠語です。江戸時代から明治期にかけて、芸妓や特定の職種を指す符丁として「猫」が使われていた記録があります。また、三味線の皮に猫皮が用いられていた歴史的背景から、三味線弾きを親しみを込めて「ネコ」と呼ぶ伝統も存在しました。
第三に、土木・建築現場における作業道具の通称です。手押しの一輪車を通称「ネコ(ネコ車)」と呼びますが、これは「狭い足場(猫の額のような場所)を身軽に通れる」「車体を伏せた姿が丸まった猫に似ている」といった現場の直感的な比喩から定着したものです。