事実に反するにもかかわらず、「競艇場にサメが出る」「選手が喰撃された」という言説がネット上で語り継がれてきた背景には、複数の要因が絡み合っています。
第一の要因は、鳴門海峡という地理的イメージです。鳴門競艇場は激流で知られる鳴門海峡の近く(小鳴門海峡)に位置しています。テレビのニュース等で近海におけるシュモクザメや大型海洋生物の目撃例が報じられるたび、ネット掲示板(5ちゃんねる等)で「鳴門で落水したらサメの餌食になるのでは」といった軽口やジョークが投稿され、それが伝言ゲームのように深刻な事故話へと変貌していきました。
第二の要因は、プロペラ外傷の凄惨さに対する誤解です。過去の重大事故において、後続艇のプロペラによって激しい外傷を負った選手の救助シーンを目撃した一部の観客や伝聞者が、その傷口の凄まじさを「まるでサメに噛まれたかのようだ」と形容したことが、いつしか「実際にサメに噛まれた」という虚構の言説へと歪められて拡散した経緯があります。
現場をよく知るオールドファンや選手関係者の間では「完全なデマ」「水面構造を知らない部外者の妄想」と一笑に付される話ですが、競技に詳しくない層の間では、センセーショナルな怪談として消費され続けてきたのが実情です。