モデルとして頂点に君臨していた入江美樹ですが、映像表現の世界においても一度見たら忘れられない強烈な足跡を残しています。それが1966年に公開された勅使河原宏監督の傑作、映画『他人の顔』(原作・脚本:安部公房)への出演です。
この映画 出演作において、入江美樹は顔の右半分にケロイドを持つ傷痍軍人の妹である看護婦という、非常に難度の高い役柄を演じました。セリフこそ多くないものの、自らの身体的な傷と美への葛藤を抱えた少女の心理を、研ぎ澄まされた佇まいと眼差しだけで表現。主演の仲代達矢や京マチ子といった昭和の名優たちの中に混ざっても決して埋没しない、異様なまでの透明感と気品を放ちました。
映画関係者の間では「本格的に女優業へ進出すれば、日本を代表する国際派シネマミューズになる」と確実視されていました。しかし彼女自身は商業演劇や過剰なメディア露出に固執せず、表現者としての確固たる矜持を保ったまま、銀幕の仕事をこの一作とわずかな作品のみに留めました。この潔い身の処し方が、後年の彼女のカリスマ性をさらに高めることになります。