山口百恵の幼少期は、決して恵まれたものではなかった。実父には別に本妻と家庭があり、百恵とその妹は戸籍上「非嫡出子」として育てられた。父親は月に数回ほど母子の元を訪れる程度で、家庭への経済的支援は極めて乏しかったという。母の手内職で細々と暮らす貧しい生活の中で、彼女は早くから大人びた冷徹な観察眼と強烈な責任感を養っていった。
後年のインタビューや関係者の証言によると、幼い百恵にとって父親は「憧れの存在」などでは断じてなく、母を困惑させ家計を脅かす不穏な影に過ぎなかった。自身が歌の才能を見出され、若くして大金を稼ぐスターになって以降、それまで冷淡だった父親の態度は一変する。それは実娘への情愛ではなく、彼女が生み出す莫大な富と名声への執着だった。