昭和の時代のように、競馬場の窓口で現金と引き換えに紙の馬券を購入し、払い戻し機から札束を回収していた時代であれば、物理的な足取りを追うことは極めて困難だった。だが、現代の競馬環境は一変している。日本中央競馬会(JRA)の売得金の約8割以上がインターネット経由となった現代において、競馬の税金がばれる理由はすべてデジタルデータの中に残されている。
国税当局が個人の資産を補足する中核兵器が、全国の国税局・税務署を結ぶ巨大ネットワークシステム「KSK(国税総合管理システム)」だ。そして、その追跡力を支えているのが国税庁による預貯金調査の仕組みである。国税通則法に基づく質問検査権を行使することで、税務署は令状なしにあらゆる金融機関へアクセスし、特定の個人の入出金履歴を過去10年規模で照会できる。
ネット投票PATと銀行口座の照会は、税務調査官にとって最も容易な作業だ。即PATやA-PATを利用するには、必ず本人名義の指定銀行口座を紐付けなければならない。競馬の開催日ごとに銀行口座からJRA側へ資金が移動し、レース終了後に払戻金が一括して口座へ送金される。この送金名義は「JRA」または専用の決済名義となっており、銀行の取引明細に誰が見ても明瞭な記録として半永久的に刻まれる。
税務署は、年間を通じて不自然に巨額の資金移動がある口座を機械的に抽出している。普段は手取り月給30万円程度の会社員の口座に、ある週末に突然500万円の入金があり、その名義が公営競技関連であれば、KSKシステムの監視網に即座にフラグが立つ。現場の国税調査官は、泳がせているだけであり、「気づいていない」のではなく「追徴税額の利息(延滞税)が膨らむのを待ってから着手している」ケースすら存在する。