ハラスメントの相談現場や当事者の手記、匿名掲示板・知恵袋等に寄せられる数万件の被害証言を精査すると、職場と家庭という閉鎖空間で被害が深刻化しやすい実態が見えてくる。
自己愛性人格障害の職場の上司による被害では、公衆の面前での執拗な叱責や、成果の横取りが日常的に行われる。ある大手メーカーに勤務していた30代男性の手記には、次のような生々しい記録が残されている。「どれだけ完璧な資料を作成しても『センスがない』と一蹴され、いざ役員会で高評価を受けると『自分が徹底的に鍛え直したからだ』と手柄を独占された。徐々に自分の感覚に自信が持てなくなり、出社前の吐き気が止まらなくなった」。
一方、自己愛性人格障害の夫婦関係においては、外見上は「理想の家庭」を取り繕いながら、密室でパートナーを精神的に追い詰める巧妙な手口が目立つ。ターゲットにされやすい人の特徴として、「共感性が高く優しい」「責任感が強く自責傾向がある」「争いを避けて我慢を重ねる」といった気質が挙げられる。加害者はこうした善意や誠実さに寄生し、罪悪感を巧みに操作して依存関係(共依存)を固定化させていく。