カサゴを食べるという行為には、ある種の身体的な作法が求められる。切り身しか食べたことのない若い世代が、頭部を丸ごと残したカサゴの煮付けを前にして途方に暮れる場面に、最近はよく出くわす。しかし、この魚の真価は胴体の白身だけにあるのではない。
エラの後ろにある小さな頬肉(ほほにく)、カマの奥に隠された引き締まった筋肉、そして唇や目の周りに凝縮されたプルプルとしたゼラチン質。小骨を指先で避けながら、骨と骨の隙間に舌を滑り込ませ、旨味が染み込んだコラーゲンを吸い出す。箸だけでなく、時には指先を汚しながら骨の髄まで愛でる。魚を丸ごと一匹、命として解体しながら味わうという濃密な食体験が、スマートで手軽な食卓の普及とともに急速に失われつつあるのだ。