峰不二子を取り巻く官能描写の歴史を紐解く上で、外すことができないのが「原作漫画のハードボイルドな濡れ場」と、2012年に日本テレビ系で深夜放送された名作スピンオフ『LUPIN the Third 〜峰不二子という女〜』です。
原作第1話「ルパン三世颯爽登場」において、不二子はすでにルパンの前に姿を現していますが、当時の描線はアメコミ調の陰影に富み、女性器の直接描写こそ避けているものの、豊満な乳房や肢体、乱れるシーツの質感が生々しく紙面に刻まれていました。モンキー・パンチ氏が描いた濡れ場は、甘美な恋愛描写ではなく、スパイ小説やハードボイルド映画特有の「裏切りと殺意が隣り合わせのセックス」です。相手を油断させる麻薬として己の肉体を差し出し、絶頂の隙を突いて喉元に刃を突きつけるような、冷徹なプロフェッショナリズムがそこにありました。
この原点の毒気を21世紀に鮮烈に蘇らせたのが、山本沙代監督が手掛けた『峰不二子という女』です。深夜枠での放送となった同作では、テレビアニメの限界に挑むかのような過激なベッドシーンが連続します。
作中では、カルト教団の教祖や富豪のパトロンたちと不二子が肌を重ねる描写が、退廃的かつ文学的な映像美で描き出されました。特に第1話冒頭から披露される緊縛描写や、全裸で銃火を掻い潜る姿、そしてターゲットの男をベッドの上で翻弄しながら冷たい瞳で目的の品を見据えるシークエンスは、単なる男性向けの性的消費にとどまらず、自らの性別と美貌を極限まで搾取・武器化して生き抜く一人の女性の「業」を強烈に突きつけ、当時のアニメ界とファンの間で凄まじい衝撃を呼びました。