裁判当時から現在に至るまで、インターネット掲示板やSNS、技術者コミュニティでは激しい議論が戦わされてきました。世論は決して一枚岩ではありませんでした。
技術者層や一般世論の多くは中村氏の「孤軍奮闘」に熱烈な喝采を送りました。「会社の理不尽な搾取に立ち向かった英雄」「日本の技術者が冷遇される構造を壊してくれた」という共感の声が殺到し、中村氏のストレートな物言いは既存の終身雇用に閉塞感を抱いていた多くのサラリーマンの代弁者として受け入れられました。
一方で、企業経営層や一部の開発現場からは冷徹な反論も噴出しました。「研究に必要な数億円規模の設備費や原材料費を出し、失敗のリスクを背負ったのは会社だ」「中村氏一人で製品ができたわけではなく、周辺回路や量産化に汗を流した無名技術者の存在を無視している」という指摘です。
実際に、日亜化学の創業者である小川信雄会長(当時)が、周囲の反対を押し切って中村氏の研究に多額の資金と自由裁量を与えたという歴史的事実もあり、単なる「悪徳企業 vs 被害者の天才」という二項対立では語り切れない多面的なリアリティが存在しています。