毒性ばかりがクローズアップされがちなホウ酸ですが、制御された濃度と適切な用法においては、医療や建築の分野で欠かせない優れた機能性を発揮します。
かつて眼科医療の現場で広く用いられたのが、ホウ酸を用いた目薬や洗眼です。日本薬局方にも収載されている「ホウ酸水」は、結膜嚢の洗浄や消毒を目的として、濃度2%以下(常温の水100mlに対しホウ酸2g以下)で調製されます。ホウ酸には静菌作用(細菌の増殖を抑える力)があり、浸透圧を目薬の基準に合わせる緩衝剤としても極めて優秀です。近年では防腐剤フリーのディスポーザブル人工涙液や専用洗眼薬が主流となり、家庭で粉末から自作する機会は減りましたが、点眼薬の等張化剤としては現代でも多くの医薬品に処方されています。
家庭での除菌・防カビを目的としたホウ酸水の作り方と濃度については、常温(20℃)の水における溶解度が約4.7%であることを理解しておく必要があります。安全かつ実用的な希釈液を作る場合、ぬるま湯(約40℃)100mlに対してホウ酸2g〜3gを溶かし、完全に溶解させた後にスプレーボトルへ移します。これを浴室のタイルの目地や押し入れの隅に吹き付けることで、カビ菌糸の発育を抑制する効果が得られます。
さらに2026年現在の建築業界で急激に需要を伸ばしているのが、ホウ酸によるシロアリ対策と木材防腐です。従来の合成殺虫剤(ネオニコチノイド系等)による防蟻処理は、5年程度で成分が分解・揮発してしまうため、定期的な再施工が必要でした。また、揮発した化学物質によるシックハウス症候群の懸念も残されていました。
これに対し、鉱物由来の高濃度ホウ酸塩(八ホウ酸二ナトリウム四水和物など)を木材内部まで加圧注入、あるいは高濃度塗布する工法は、木材中の水分に浸透して強固に定着します。無機物であるため紫外線や時間経過で分解・蒸発することがなく、雨水に直接さらされない半密閉の構造壁内であれば、30年以上の半永久的な防蟻・防腐効果を持続します。自然派住宅や高気密・高断熱住宅の構造材処理において、揮発成分ゼロの安全策として業界基準の座を確立しつつあります。