最高峰である横綱への昇進となれば、ハードルはさらに跳ね上がる。「大関の地位で2場所連続優勝、またはそれに準ずる成績」という明確な規定が存在する。だが、ここでも数字の裏に隠された「品格・力量」という目に見えない尺度が立ちはだかる。有識者で構成される横綱審議委員会による審議では、単に勝ったかどうかだけでなく、横綱としての立ち振る舞いや取り口の美しさまで問われるからだ。
時に物議を醸すのが「準ずる成績」の解釈だ。13勝2敗での同星首位決戦敗退と、12勝3敗での混戦の中での準優勝では、審議会が受ける印象はまるで異なる。勝敗の数字以上に、土俵上で見せる圧倒的な存在感や、相手を完膚なきまでに叩き伏せる安定感がなければ、推薦の答申は出されない。スポーツ記者として数々の審議を取材してきたが、会議室のドア越しに伝わる緊迫感は、現場のスポーツジャーナリズムにおいても最も力が入る瞬間のひとつだ。