多くの観光客は本堂での参拝だけで帰路についてしまうが、待乳山の真の奥行きは境内の裏手に隠されている。標高わずか9.8メートル、東京23区内で最も低い自然の山であるこの丘には、起伏に富んだ神域が広がる。
本堂の右手奥へ進むと、緑深き木立の中に「出世観音」が静かに鎮座している。かつて江戸の町人たちが立身出世を祈願したこの場所は、現在もキャリアの転機を迎えたビジネスパーソンが密かに参る隠れスポットだ。さらに境内の一角には浅草名所七福神巡りの一柱である毘沙門天が祀られており、勇気と勝負運を授ける要所として鎮座する。
混雑を避けたいなら、朝8時半から9時半の訪問が理想的だ。Google マップでルートを検索すると浅草駅からの大通りが案内されるが、地元民は言問通りから一本北の路地を抜け、山谷堀公園の緑道を借景にしながら裏手から境内に入るルートを好む。境内に設置された小型のスロープカー(さくらレール)を使えば、足腰に不安のある参拝者でも無理なく丘の上の本堂へ登ることができる。