かつて「カワイイ」といえば、無垢で非の打ち所がない愛らしさが王道だった。しかし現在、人々の心を強く揺さぶるのは、どこか人間味のある不完全さや哀愁を帯びた作品群だ。
その代表格が、イラストレーターのナガノ氏による『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ』だろう。過酷な労働や理不尽な試練に直面しながらも懸命に生きるキャラクターたちの姿は、現代人のリアルな感情と共鳴し、社会現象と呼べる熱狂を生み出した。また、長年にわたりシーンを牽引するカナヘイ氏の生み出すキャラクターたちも、ゆるやかな脱力感と緻密な日常描写で幅広い層の心を掴み続けている。
日本のカワイイ文化は、ただ鑑賞されるだけのマスコットから、受け手自身が日々の感情を投影する「身代わりのストーリーテラー」へとその役割を拡張させたのだ。