坂本慎太郎のサウンドの骨格には、1960年代から70年代のサイケデリック・ロックやファンク、ディスコ、そしてマーティン・デニーらに代表されるエキゾチカの芳醇な残り香がある。パンデミック禍を経て生み出された名盤『物語のように』では、それらの要素が極めてシンプルかつ洗練された形で結実した。
過剰な音のレイヤーを削ぎ落とし、ベースとドラムのミニマルなグルーヴ、浮遊するスティールギター、そしてささやくようなボーカルだけで構築される音空間。不気味なほどの明るさと、その裏側に張り付いた絶望や虚無感。その二面性こそが、聴く者を惹きつけてやまない中毒性の源泉となっている。