本作の舵取りを担った松尾昭典監督の緻密な演出も見逃せない。日活のアクション映画やドラマで手腕を振るった松尾は、音楽とドラマが複雑に絡み合う独特のテンポ感をスクリーン上に構築した。物語のクライマックスにかけて感情の高まりと主題歌が見事に同調する叙情的な演出は、まさに職人技の冴えを感じさせる。
当時の日本映画界において、主題歌のヒットと映画の興行成功を結びつける「歌謡映画」というジャンルは確立されていたが、松尾監督の手による本作は単なるプロモーション映画の域を完全に脱していた。人間ドラマとしての深みと、叙情豊かな映像美を極限まで追求した表現は、日本映画の歴史に燦然と輝く金字塔として刻まれている。