結論から明かせば、保険証の色で個人の年収や社内での役職、社会的ランクが直接判別できる仕組みは日本の医療保険制度に存在しません。クレジットカードの「ゴールド」「プラチナ」「ブラック」のように、所得や信用力に応じてカードの色が豪華にランクアップしていくような制度設計ではないのです。
ではなぜ、「保険証の色で格差がわかる」という都市伝説が定着したのでしょうか。その背景には、加入している医療保険制度(保険者)ごとの「平均年収の統計的な偏り」があります。
日本の公的医療保険は、主に大企業の会社員が加入する「組合健保(健康保険組合)」、中小企業の従業員が中心の「協会けんぽ(全国健康保険協会)」、公務員や教職員を対象とする「共済組合」、そして自営業やフリーランス、無職の方が加入する「国民健康保険(国保)」に分かれています。大企業や公務員の保険証に特定の色合いが多く採用されていた時期があったことから、「特定の色=大手勤務=高年収」という誤った連想が独り歩きし、あたかも色そのものにランク付けの意味があるかのように誤解が広まりました。
厚生労働省の保険局関係者や医療機関の事務関係者を取材しても、「保険証の色は保険者が印刷コストや視認性、更新年度の識別のために定めているに過ぎず、被保険者の給与額によって色を刷り分けるような運用はあり得ない」と一様に口を揃えます。